【アーセナルNEWS】チームの戦術がガブリエウの怪我に与えた影響

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チームの戦術がガブリエウの怪我に与えた影響

スポーツ科学の観点から、公開されている情報を元に選手の怪我について分析を行っているPhysio Scoutの中の人Serhan Segitmen氏が、理学療法士のJared Winston氏と共に「The Scout Report」でガブリエウの怪我についての分析を行っているので、以下にご紹介します。

 

1.内転筋を理解する

メディアではよく「股関節の筋肉」と大雑把に捉えられがちな内転筋群は、主に長筋(longus)、短筋(brevis)、そして大内転筋(magnusで構成される。とりわけ長内転筋(adductor longus)は全内転筋損傷の60〜70%を占めるほど脆弱な部位だ。
※内転筋群の名称に誤りがあったため修正しました。

これらの筋肉が関与する動きには以下のものがある。

  • 股関節内転(脚を身体の中心線へ引き寄せる動き)

  • 股関節伸展

  • 股関節屈曲

特にフットボールでは以下の局面で内転筋損傷が生じやすい。

  • 方向転換(カット、ピボット)

  • 強いキック動作(シュート、ロングパス)

  • 急加速やスプリント

  • タックルやディフェンスの踏み込み時における過伸張

 

2.ガブリエウのケース

概要

  • 何が起きたか:右内転筋の損傷

  • 時期:11月15日、セネガル戦後半

  • 発生状況:相手陣での攻撃から守備へのトランジションでスプリント・バックしたとき

  • 早期見立て:グレード2の損傷に相当する1〜2ヶ月の離脱

負傷のメカニズム、回復期間の予測、視覚的証拠を踏まえると、近位部(腱付着部付近)の内転筋損傷が疑われる。

では、なぜ懸念されるのか。

この部位は上半身と下半身の力を伝達する重要な役割を持ち、方向転換が多い競技では特に酷使される。近位腱は血流が乏しく治癒が遅い。

ガブリエウのようなDFはブレーキ動作、横方向の動き、素早いリカバリーを繰り返すため、この近位内転筋と股関節安定筋群へ大きな負荷がかかる。

 

3.戦術面での意味合い

「またアーセナルの負傷か。戦術面での負荷が高すぎるのでは?」と考える読者も多いだろう。その可能性はある。特に、負傷者が増えるほどこの考えは強まる。なぜなら、アーセナルは次のような特徴を持つからだ。

  • 高いDFライン

  • アグレッシブで綿密なプレッシング

  • ファイナル・サードでのボール奪取数がリーグ上位

さらに、アルテタ監督はインバーテッド・フルバック(※いわゆる偽SB)を多用する。SBがビルドアップや左サイドの守備時に中盤へ絞ると、従来のワイドな守備スペースが空くことになる。

これはボール保持の面では利点となるが、守備においては中央のスペースをコントロールしつつ、ワイドエリアではプレッシング・トラップを活用する。

つまり、相手をまず外へ誘導し、タッチラインを “ もう一人のDF ” として利用しながら一気に刈り取る構造だ。

この戦術を成立させるには、その空いたスペースをカバーし、サイドラインにおけるプレッシング開始点を担える優れたCBが不可欠となる。

SBが中に絞れば、ガブリエウはセンターラインの安定性を維持しつつワイド守備スペースも確保するという作業を両立しなければならず、横方向の加減速負荷が急増する。当然、近位内転筋と股関節安定筋群へのストレスも増える。

「DFなら全部守るのが仕事では?」という反論もあるだろう。確かにその通りだが、ガブリエウのようにコンスタントかつ効果的に守れるCBはそう多くない。

この点を理解するために、幾つかの簡単な比較をしてみよう。

まず今季のリバプールについて考えてみる。ミロシュ・ケルケズは攻撃面を評価されて加入したが、守備面の不十分さがファン・ダイクにいつも以上にワイドなスペースのカバーを強いている。

今季のリバプール戦を定期的に観ていれば、守備陣の不安定さと、それに起因するファン・ダイクの苛立ちが一貫して見て取れる。

これは、たび重なる守備の崩壊に加え、彼が担わなければならない守備面での責任が増大していることを反映してのことだろう。

もう一つの例はヨシュコ・グヴァルディオルだ。彼も左CBで、高強度のプレスとインバート・フルバックのシステムを採用するチームでプレーしている。

アルテタ監督の前職はどこか。そう、グァルディオラ監督率いるマンチェスター・シティだ。つまり、クライフの哲学を色濃く継承する系譜だ。

SofaScoreの比較ヒートマップを見ると、ガブリエウの守備範囲はグヴァルディオルより明らかに広く、横方向の負担が段違いだ。これは、深い戦術知識がなくとも理解できる差だろう。

 

4.まとめ

まず大前提として、今回の怪我はブラジル代表の試合で起きたものだ。我々もそれは理解している。だから、そこを指摘されても困る。

しかし、この記事の主眼は、彼が最も多くプレーするチームであるアーセナルの戦術構造が復帰へどう影響し得るか、そして負傷の詳細と結びつけて考察する点にある。

今季のガブリエウはまさに鉄人といえる。プレミアリーグ11試合すべてにフル出場しているだけでなく、CLでも4試合すべてにスタメン出場している。

さらにブロック数、クリア数、空中戦、そして守備への貢献度においてチームトップの成績を収めているのだ。

だが、この負傷は解剖学的にも、戦術的負荷の観点からも懸念が大きい。加えて彼には過去の負傷歴がある。

2025年4月のフラム戦で左ハムストリング断裂の大怪我を負い、手術が必要となって2024/25シーズンの残りを欠場した。

だからこそ、我々は彼の完全復帰を願う一方で、本稿の中心となる問いに向き合わざるを得ない。

「戦術は負傷リスクに影響するのか?」

そして不運にも、過去2シーズンのガブリエウはその答えが『YES』であることを示す、最も明確な例の一人となりつつある。

(ソース:The Scout Report

 

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