【アーセナルNEWS】チームの戦術がハムストリングの怪我に影響

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Physio Scout:アーセナルの戦術がハムストリングの怪我に影響

スポーツ科学の観点から、選手の怪我について分析しているPhysio Scoutが、自身のHPにおいてアーセナルでハムストリングの怪我が頻発している原因について、ヴィクトル・ギェケレシュのケースを例に考察しています。以下に記事の内容をご紹介します。

 

1)ハムストリングの構造

ハムストリングは大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の三つの筋肉から成る筋群であり、太ももの後ろ側に位置する。これらの筋肉は膝の屈曲(曲げる動作)と股関節の伸展(脚を後方に動かす動作)を可能にする。

この二つの役割を持つため、ハムストリングは特に高強度のスプリント中に損傷を受けやすい。足が地面に接地する直前、ハムストリングは遠心性収縮によって脚の動きを減速させ、身体のブレーキシステムのような働きをしている。

 

2)ギェケレシュの負傷状況

11月1日に行われたバーンリー戦の前半に右脚のハムストリングを負傷した。試合映像を見ると、相手ゴール前でのプレスもしくはリカバリー動作後に違和感を感じている様子がみられる。

今回の負傷により2~4週間程度の離脱が見込まれており、この離脱期間はグレード1の肉離れと一致するものだ。

皆さんは『ちょっと待ってくれ、ハムストリングの怪我の殆どは高速スプリント中に起こるはずでは? しかし、ギェケレシュはそんなに速く走っていなかったが?』と思うかもしれない。

その通りだ。だが人体の損傷メカニズムはひとつに限定されることはほとんどない。もしそうなら、フィジオの仕事はあまりに簡単すぎるだろう。

ある研究によれば、エリート・レベルのフットボールにおけるハムストリング損傷の約半数は、全力でのスプリント中ではなく、中程度の強度での加速・減速、あるいは疲労時のリーチ動作中に発生していると報告されている。

最大出力に満たない動作であっても、ボールをコントロールしようとする伸張動作や半身のターンなどが、ハムストリングに強い遠心性負荷をかけ、筋肉の許容限界を超えることがあるのだ。

3)疲労と戦術的な要求

『だが、今回の怪我は前半に起きているではないか。プレミアリーグのエリート選手が、そんなに早く疲れるはずがない』と思うかもしれない。

ここで少し視点を広げてみよう。なぜそのようなことが起きたのかを理解するには、アーセナルにおけるギェケレシュの戦術的役割と、スポルティング時代との違いを考慮しなければならない。

スポルティングでは、彼はトランジション主体のシステムにおいて、高い位置から直接的な攻撃の起点だった。相手の裏への連続的な走り込みや早い段階で縦パスを出し、ボールを失った後の守備負担は最小限だった。

サンプル数は少ないが、ボールを少なくとも10メートル前進させるプログレッシブ・キャリー率の違いを見るだけでもその差は明らかだ。

■スポルティング 2024/25シーズン:4.28/90分(99パーセンタイル)
■アーセナル 2025/26シーズン:2.29/90分(パーセンタイルは未算出)

アーセナルでは、彼は組織的なポジショナル・プレスの一部として機能しており、すべてのボールを追い回すのではなく、相手のビルドアップを誘導する役割を担っている。

そのプレッシングは連動的かつ反応的であり、長距離の直線スプリントではなく、短い加速を繰り返すことが求められている。

彼の走行量を象徴する試合が、マンチェスター・ユナイテッド戦でのデビュー戦だった。ピッチに立った60分間でギェケレシュは約7.7kmを走破し、そのうち約20%がスプリントによるものだった。

これをフル出場換算にすると約11.6km/90分となり、FWの平均範囲(9〜11km/90分)を上回り、リーグ内でも走行量の多い攻撃的選手や中盤の選手と同等の数値になる。

 

4)全てのスプリントが同じではない

アーセナルのチーム戦術の根幹を成すトリガー型のプレッシング・システムは、反応的な爆発力、すなわちパスが後方に戻された瞬間やDFが強烈なタッチをした瞬間に急加速を要求される。

このような反応的スプリントは、ハムストリングの怪我のリスクを高める要因となる。なぜなら、筋肉が十分な準備的活性化の時間を確保できないことがあるからだ。

ほんの数ミリ秒の差ではあるが、筋肉は完全に緊張状態に入る前に負荷を受けながら急速に伸ばされることで、損傷の危険が生じる。

それに対し、ディフェンスラインの裏を狙って走るような計画的なスプリントでは、神経系が事前に反応し、最大出力に入る前にハムストリングをあらかじめ活性化させることができる。これは、ギェケレシュが昨季のスポルティングで主に行っていた動きである。

 

5)回復と再発のリスク

将来的な軟部組織損傷の最大のリスク要因のひとつは何だろうか? その通り、同じ筋肉の過去の怪我だ。早期復帰した場合、再負傷のリスクは15〜30%に達すると言われている。

したがって、ギェケレシュの今回の肉離れが軽度に見えるとしても、単に診断結果だけに注目するわけにはいかない。

スポーツ医学の専門家として、我々はより広い文脈を考慮する必要がある。新しいリーグ、異なる戦術的要求、そして蓄積する身体的ストレス、これらすべてが重要な要素である。

スポルティングでは、彼のランは直線的で予測しやすかった。しかしアーセナルでは、半静止状態や回転動作からの反応的な短距離の加速を繰り返す役割が求められる。まさに、回復途中のハムストリングを試すような予測不能な動きだ。

構造的な回復を終えた後でも、遠心性筋力、反応的タイミング、そしてプレッシング・トリガーに対する自信を取り戻すことが不可欠だ。

それらが十分に回復する前に復帰すれば、アーセナルのプレッシング・アイデンティティを象徴する瞬間に、再び負傷するリスクが高まるだろう。

(ソース:The Scout Report

 

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