アルテタ監督が2月のPL月間最優秀監督賞を受賞
プレミアリーグが2月の月間最優秀監督賞の受賞者を発表し、マン・Cのグァルディオラ監督やマン・Uのテン・ハフ監督などを抑えて我らがアーセナルを率いるアルテタ監督が選出されました。通算7度目の受賞です。
2月のアーセナルは4戦4勝で終えたほか計18ゴールも奪うなど絶好調でした。なお、2月を全勝で終えたのはアーセナルだけです。
アルテタ監督が今シーズンのPL月間最優秀監督賞に5回ノミネートされていますが受賞するのは初となります。
なお、プレミアリーグの歴史の中で月間最優秀監督賞を7回以上受賞しているのはアルテタ監督の他に7名しかいません。
そのうちの一人は22年間に渡りアーセナルを率いたベンゲル前監督で15回受賞しています。
(ソース:Arsenal.com)
ラヤ vs ラムズデールのGK論争:アルテタのギャンブルは成功したのか?
今シーズンのアーセナルにおいて開幕から度々論争になっているのがGK問題です。昨シーズンまで不動のレギュラーとして君臨していたラムズデールと、昨夏にローン移籍で加入したラヤのどちらが正GKに相応しいかという議論です。
この問題に関して、sky sportsのサム・ブリッツ氏が分析を行った記事が掲載されているので要約をご紹介します。
アーセナルでは昨シーズンまでラムズデールが正GKを務めており、プレミアリーグ・ベスト11に選出される活躍を見せていました。
しかし、昨夏の移籍市場でアルテタ監督はブレントフォードからラヤをローン移籍で獲得する決断を下します。つまりラムズデールが不動のレギュラーとして君臨していたにもかかわらず、他クラブの正GKを引き抜いた訳です。
そして、アルテタ監督はそのラヤを今シーズンの正GKとして起用し続けています。ラムズデールはファンから絶大な人気を得ていることもあり、このアルテタ監督の選択に関して開幕当初から様々な議論が沸き起こりました。
最近はチームが絶好調なこともあってGK論争は沈静化していますが、果たしてアルテタ監督の望み通りに事は進んだのでしょうか?
まず、ラヤは失点に繋がるミスを犯すことが何度かあってその度に非難されてきました。例えばチェルシー戦でムドリクのクロスに対する処理を誤ったり、4-3で勝利したルートン戦でも二つのミスを犯したほか、直近ではCL・ポルト戦でも失点に繋がる判断ミスを犯しています。
ラヤのセービングに関するスタッツを見てみると、プレミアリーグの全GKの中でも下から3~4番目に位置しています。
今シーズンのラヤのセービング率は64%に止まっており、これは今シーズン50%以上のプレー時間を得ているGKの中でも下から2番目に低い数字です。
さらにラヤの失点阻止率は-2.9となっています。すなわち、理論上の失点数よりも実際の失点数が3点も多いということです。
この数字はプレミアリーグの全正GKの中で下から5番目となっていて、ラヤより下位にいるのはいずれも降格争いをしているクラブのGK達です。
ただ、この様なスタッツを分析する際にはコンテクストが重要で、そもそもアーセナルのGKにシュートセービングを得意とするGKが必要なのか?という問題があります。
もちろん、GKですからいつかはラヤのセービング能力が必要となる場面が来るはずで、シーズンの行方を左右する天王山となる試合では特にそうでしょう。
しかし、今シーズンのアーセナルはそもそもシュートを撃たれる場面がとても少ないチームです。
今季はここまで223本のシュートを撃たれていますが、これはマン・Cに次いで2番目に低い数字です。この被シュート数の少なさもあってアーセナルはリーグ最少失点を誇っています。
また、確かにラヤのセービングに関するスタッツはあまり良くありませんが、その一方でボックス内を制する能力に長けています。
ラヤはクロス処理で成功率93.1%を誇るほか、グラウンド上でのデュエル勝率100%、GKからのスロー成功率100%などボックス内全体の守備に秀でています。
さらに、リーグ最多となる9度のクリーンシートを記録しており、ゴールデングラブ賞の受賞も視野に入る活躍を見せているのです。
もちろん、失点の少なさとクリーンシートの多さはラヤ1人によるものではなく、チーム全体の守備強度の高さによるものですが、ラヤもそれにしっかりと貢献していることは間違いありません。
この他に、ラヤはラムズデールよりも少しだけピッチの高い位置でプレーしているという数字も出ています。些細なことかもしれませんが、アーセナルの戦術にとっては大きな意味を持ちます。
アルテタ監督はチームをより高い位置でプレーさせようとしており、DFをハーフウェイラインへ向かって押し上げるほか、ハイプレスを仕掛けるためライスや他の選手を相手のボックス付近まで押し込ませることでピッチ全体での優位性を確保しようとしています。
つまり、アルテタ監督にとってラヤは優秀なスイーパー兼GKなのです。実際、相手チームがアーセナルのハイプレスを突破しようと試みたことが13回ありますが、その全てを阻止しています。
今シーズンのプレミアリーグにおいてこのスタッツで勝率100%を記録しているのはラヤとトラッフォード(バーンリー)の二人だけです。
ラムズデールはラヤのように高い位置を取るのが苦手で、以前もインタビューでアルテタ監督がどんどん高い位置でのプレーを要求することに対して戸惑いがあり、監督と話し合って妥協点を見い出したと語っていました。
しかし、アルテタ監督は戦術に関して非情な監督であり、自分の考えたシステムに合わない選手がいたらそれに見合う選手を他から探してくるだけです。
もう一つラヤがラムズデールより優れてるのは素早い判断力とボールスローの正確さです。実際にラヤの素早いロングスローがカウンターの起点となりゴールが生まれることがあります。
このラヤが持つ配球能力の高さがアーセナルの武器となっているのです。今季のラヤはセカンダリ・アシスト(シュートに繋がるパスをアシストした数)が多くGKの中でトップ3に入っています。
アーセナルは昨シーズンの終盤に失速してタイトルを逃した苦い経験があることから、今季はどうやって同じ失敗を繰り返さないようにするかに注目が集まっています。
その点で言うとラヤが正GKとしてプレーするようになったほか、ホワイトが偽SB化してボランチの位置へ入るようになったこと、ライスとハフェルツが中盤に高さをもたらしたことなどが挙げられます。
シーズンも終盤に差し掛かるなか、前述の効果もあってアーセナルはホーム・アウェー共に冷酷なまでにゴールを量産しています。
ただ、裏を返すとラヤがいることに最適化されたシステムのため、そこにラムズデールが入るとバックラインの状況が不安定になってしまうかもしれません。
(ソース:sky sports)