冨安:環境への適応や日本と欧州のロッカールームの違いについて語る
冨安はまだ24歳ですがこれまで日本、ベルギー、イタリア、そしてイングランドと複数の国でプレーした経験を持ちます。
異国の地でプレーするためには新たな環境に適応しなければなりませんが、冨安はそれも「仕事の一部だ」と考えているようです。
アーセナルでは唯一のアジア出身選手ということで、ヨーロッパの他の国から来ている選手以上に努力をしてイングランドの環境に馴染む必要がありました。
しかし、冨安はチームプレーヤーとして自然とチームメイトがサポートしてくれると言うことをこれまでの経験が知っています。
冨安
「僕が初めてチームの一員になったのはたぶん4歳か5歳のときだったと思う。小学校に上がる前に通っていた幼稚園みたいなところにフットボール・クラブがあって、そこでフットボールを始めたんだ。フットボールをプレーしたのはその時が初めてで、それ以降は基本的にずっとチームに所属している。」
今では日本代表としてプレーしている訳ですが、その時から同世代の中でひときわ目立つ選手だったのでしょうか?
「いやいや僕は全然特別じゃなかったよ!(笑) 若い頃は全くそんな感じじゃなかった。別に謙遜している訳じゃなくて、当時のチームメイトに聞いてもらえてれば分かると思う!(笑) フットボールをプレーするのが楽しいからやっていた感じだね。
他のスポーツは一切やらなかった。それくらい大好きだったんだよ。みんな同じ学校に通っていることもあってお互いのことを良く知っていたのでチームはとても仲が良かった。
今でもその時の仲間数人と連絡を取り合ってるよ。実際、日本にいる親友は学生時代に一緒にフットボールをして育った仲間だからね。13歳から17歳まで同じアカデミーに所属してプレーしていたチームメイトなんだ。彼はもうプレーしていないけどその時からの親友だね。」
その後、冨安は順調に成長していき世代が上がるにつれてどんどん影響力を増していきます。ただ、ピッチ内外を問わず声を出して周りを引っ張るタイプではなかったようです。日本ではリーダーを選ぶ際に他の資質がより重要視されることも関係しているかもしれません。
「アカデミーではキャプテンを務めることが多かったかな。僕はチームで一番声を出すような選手ではなかったし、そういうことは決してしなかったけれど、ぶっちゃけ日本ではキャプテンになる人が一番声を出すタイプである必要はないんだ。
ピッチ上ではすごく良いプレーをするし、ピッチの外でも優れた人間であることの方が重要視されて、そういう選手を周りもリスペクトするからね。
だから、リーダーシップや声の大きさよりも、そうやって周りからリスペクトされる人がキャプテンになる感じだ。」
その後、冨安はプロ入りから僅か2年後に19歳で海外へ挑戦します。ベルギーのシント=トロイデンに加入するとすぐさま主力選手として活躍するようになります。
すると、翌年にはセリエAのボローニャへ引き抜かれますが、そこでも直ぐに頭角を現してレギュラーとして活躍します。そしてボローニャ移籍の2年後にアーセナルへ加入することになります。
アーセナルに加入してから2年以上が経過し50試合以上出場していますが、冨安はすっかりイングランドの生活にも慣れ、ドレッシング・ルームの仲間意識を感じているようです。
「選手同士の関係はとても良いと思う。若い選手が多くて同世代の選手もたくさんいるから、一つのチームとしてまとまっているのが実感できるよ。もちろん選手だけでなくコーチング・スタッフもそうだ。僕らは家族みたいに仲が良いんだ。」
現在のアーセナルでは、トップチームに18ヵ国の選手が集まっていて、グループには様々な経験を積んできた選手達がいます。
冨安はこの多様性こそがチームの強みであり、適切な環境と文化があれば選手達を一つにまとめることが出来ると確信しているようです。
「どのチームにおいても大切なことだけど、まずは国籍や文化の異なる他の選手たちをリスペクトすることが必要だと思う。
まずは相手を尊重して何を望んでいるのかだったり、その人の人柄や性格、僕に何を期待しているのかを理解する必要がある。そうすれば相手のことをより深く知ることができる。だからみんな仲良くなれるんだよ。
僕にとって(国の違い)はとても大きなものがある。もちろんヨーロッパの国同士では、例えばスペインとポルトガルの間には、アジアの国々との違いほどの大きな差は無いかもしれない。もしかしたら大きな違いがあるのかもしれないけど、僕には特に違いが感じられないかな。
ヨーロッパ出身の他の選手と自分との間にはもの凄い違いを感じている。だけど、僕はイングランドにいるんだから、その環境に適応してフィットするのが自分の責任なんだ。
僕はフットボールをプレーするためにここへ来たんだから、他の人じゃなくて自分自身が環境に適応しないといけない。
ここでプレーしているとスケジュールや食事の時間などで幾つかの違いを感じることはある。だけど、ベルギーにいた頃にはすでにそれにも慣れていたし、もちろんそのあとイタリアでもプレーしていたからね。
あと、日本人は一般的に他の環境に適応するのが得意だと思うし、僕自身にもそうだ。環境に適応するのもフットボール選手としての仕事の一部だからね。だから、イングランドへ来たから特別難しいことがあるとは感じていないよ。」
アーセナルではどの選手と特に仲が良いのでしょうか?
「たぶんサリバかな。でも正直なところ僕はあまりお喋りじゃないんだ!(笑) それはこの環境だからって訳じゃない。むしろアーセナルのドレッシング・ルームでは日本代表にいるときよりもお喋りかもしれないね!(笑)
僕は元々おとなしい方だと思うし、日本代表にいるときもそう言われる。でもここは居心地が良いよ。ロンドンには日本人の友人も何人かいるから人と会うことも多いしね。
ロンドンでどこへ行った方が良いとかそういう事を他の人に聞いたことはあまり無いと思う。そもそも僕は全然出歩かないからね。
コーチング・スタッフで仲が良いのを一人挙げるとしたらカルロス・クエスタかな。彼はDF陣とよく話すからトレーニング・グラウンドで一緒にいることが多い。だけど、コーチング・スタッフやメディカル・スタッフの全員が本当に親切で僕を歓迎してくれている。」
すっかりアーセナルでの生活にも慣れている冨安ですが、日本では代表チームに欠くことの出来ない存在となっています。アーセナルでの生活と代表での生活ではどんな違いがあるのでしょうか?
「違いだらけだよ!(笑) どこがどう違うとか説明するのは難しいんだけど、とにかく違うんだ! どっちが良いとか悪いとかではなくて、アーセナルと日本代表それぞれのドレッシング・ルームに行けば分かると思うよ!
一つ例を挙げるとすれば、日本代表は試合前のドレッシング・ルームがすごく静かなんだ。音楽も何も流れていない。
何人かの選手はイヤホンで音楽を聴いているかもしれないけれど、スピーカーを使って音楽を流したりはしてない。個々の選手が準備して集中力を高めるためだ。自分自身に集中してやるべき事をしっかりやってチームに貢献することに集中する感じだ。
もちろん、全ての選手がチームの為にプレーするのは当然だけど、(試合前の)その瞬間は個々の準備の為に全員に時間を与えることが重要視されている。そこがプレミアリーグと日本の大きな違いだと思う。」
(ソース:Arsenal.com)